3:統計から要因を探る

現代生活は「環境」「自律神経」「食」に問題を生じやすい

ところで、アトピー性皮膚炎は、人類史上、つねにどの時代にも一定の割合で存在していたと考えられますが、ここ30~40年ほどの間にこれまでにない勢いで急増しています。 前述のとおり、アトピー性皮膚炎は「遺伝的体質」「年齢」「病気」「ホルモン」「自律神経」「食」「環境」の7つのうち、いずれかにカテゴライズされる要因が単一または複数組み合わさることで、「バリア機能の弱さ」と「免疫バランスの偏り」へとつながり、発症に至ると考えられていますが、患者急増の原因は、これらの要因のうちのどれによるものなのでしょうか。 いまや国民のほぼ半数がアレルギー罹患者であるとされる日本では、現代社会のどこにその原因があるのか、多くの研究機関で調査されています。
アトピー性皮膚炎においても調査、研究が行われ、その結果、特に注目されているのは、「環境」「自律神経」と「食」です。

まずは「環境」ですが、自動車による排ガスをはじめとする空気汚染や、気密性の高い室内の清掃が行き届かない場合にダニやほこりなどのアレルゲンになりやすい物質が多い居住空間などが挙げられます。
次に「自律神経」、ストレス過多や睡眠不足、過剰なブルーライトなどの光の暴露によるものです。自律神経のうちの交感神経ばかりがつねに優位な状態が続くことで、免疫系や神経系に影響が出ていると指摘する専門家は多くいます。
次に「食」、これはライフスタイルの多様化により、各個人が好きなものを好きなだけ食べられるようになったことの裏返しでもある部分で、栄養の偏りがまず挙げられます。 また、近年の免疫学の進歩から、人間が長く培ってきた食習慣による免疫への作用も明らかになってきています。その結果から、食物繊維の重要性が指摘されています。 現代の日本では、天然のままの食材を食べる機会が減り、何らかの加工がされた食材ばかりを食べる機会が多いことから自然と食物繊維の摂取が減っています。 これが免疫の本来あるはずのバランス形成に至らない、とも考えられています。
とはいえ、同じ条件下で発症する人としない人がいることから、発症する人は7つの要因をわずかではあるがもともと持っていた可能性が高いといえます。 そのわずかな要因は、昔の暮らしをしている分には何ら支障をきたすことがなかったものでも、現代の生活様式では「自律神経」や「食」、「環境」に属する要因が、冗長されたり、追加されたりしやすくなって、アトピー性皮膚炎の発症へとつながっているのではないか、そういう人が増えたがために、アトピー性皮膚炎患者は急増したのではないか、と考えられているのです。

実際、上記に挙げた「環境」「自律神経」「食」におけるリスクリダクション(リスク除去)を心がけることで、皮膚炎症状が改善する事例は多くあります。