2:パートナーとなる医師選び
治療ガイドラインを基準にした治療法の選択が一般的ではあるが..
前述のような経緯があったものの、アトピー性皮膚炎の治療ガイドラインでは一貫して深刻な炎症患部の治療において、ステロイドの使用が示されてきました。 しかし、患者側には、ステロイド薬への根強い恐怖感が残っています。 後発のプロトピックなどの薬についても嫌疑の目を向ける患者もいます。 このため、処方される薬を充分に使用せず、治療がうまくすすまない、ということが多く発生するようになりました。 このジレンマから、漢方薬や栄養など別の角度からのアプローチも取り入れている医師もいます。
また、実はステロイド薬の使用に関する考え方も医師によってさまざまで、積極的に使用する医師もいれば、慎重に使うべきだとする医師もいます。 アトピー性皮膚炎をかえって悪化させる、として使用すべきでないと考える医師もいます。 外用薬については、医師の中でも意見がわかれているのが実状です。
また、治療ガイドラインは安全である一方、どうしても情報として古いものになってしまいがちです。 人間の免疫機構の解明は中途段階で、日々多くの発見、発表がなされ、それまでの常識が覆されることもしばしばです。 これらの新しい情報が日本全域で行われる標準医療に反映されるには、多くの検証が必要であり、結果、治療ガイドラインに盛り込まれるまでにはどうしても時間がかかってしまうのです。 近年では、海外からの新しい情報、検査や分析方法などをいち早く治療に取り入れる医師も増えています。
ガイドラインは法律ではありませんから、これに従わないからといって罰則があるわけではありません。 治療に際し、医師がどんな方法をとるかは、基本的に自由なのです。
医師の主義や考え方によって、アトピーの治療方針は異なる
アトピー性皮膚炎の治療には実に様々な方法でアプローチがなされています。 ガイドラインとは全く異なる独自の指針で治療を行う医師もいますし、 なかには、皮膚科ではない医師もアトピー性皮膚炎の治療を診療項目にあげていることもあります。
医師の考察や主義などによって、様々な方法論が展開されているのです。
ではなぜ一つの病気に、なぜこのように様々な角度からのアプローチがあるのでしょうか。 それは、アトピー性皮膚炎の原因として考えられるものが、実に数多く、またバラエティに富んでいるからにほかなりません。 このように多くの方法論が存在してしまうアトピー性皮膚炎の原因究明はいま、どのようになっているのでしょうか。
Column:わからないことは積極的にたずねよう
また逆に皮膚科だからといって、アトピー性皮膚炎に関する新しい情報を常に把握している医師ばかりでもありません。さしあたり、ガイドラインに則ってスキンケア剤とステロイド薬を処方して様子を見る、という医師もいます。 このように医療側にも患者側にも様々な意見があるため、アトピー性皮膚炎の医療は実に混沌としています。多くの方法論が存在するアトピー性皮膚炎の医療のなかから、果たしてどこに係ればいいのかを選ぶのは、医学的な知識のない一般の患者にとっては、実際面倒な話です。それこそアトピーの世界に精通した、コンシェルジュみたいな人がいればいいのに、と思ったりしますが、そこは情報化社会の現代です。インターネットをうまく活用して病院や医師が公開している情報から、安心して係れそうなところをさがしてみるのもいいと思います。
しかし、係りたい医療機関が近くにあるとは限りません。さきほどご紹介したように、基本的に治療ガイドラインに沿った治療を行う医師がほとんどですから、よほど治療ガイドラインの方針に不信感がないかぎり、最寄りの皮膚科に係っても充分安心な治療を受けられるはずです。
それよりも私が重要だと感じるのは医師とのコミュニケーションがとりやすいかどうかです。アトピー性皮膚炎の治療はステロイドを使う場合でも、ある程度の期間を要することがほとんどです。期間が長引けば、患者の心には不安や焦りが生まれます。そうした不安や焦りを払拭するためには、やはり主治医に率直に疑問について尋ねられるかどうかがカギになります。